「虫」
虫が鳴いている
いま ないておかなければ
もう駄目だというふうに鳴いている
しぜんと
涙がさそわれる
八木重吉『貧しき信徒』より
多くの命が活発に活動する夏の季節、その中で虫たちの声を味わわれた詩です。
この8月はお盆や終戦記念日と命について考えさせられる時期です。
終戦記念日もテレビやラジオを通して当時の様子を知らされます。
ある法事での事。
施主の娘さんが亡き父の生前の記録ノートを見つけたと、集まった皆さんや私に見せて下さいました。
その記録は戦争の記録でもありました。数年戦地へ行き、無事帰還した記録が書かれていたのです。
厳しい時代の中にあっても精一杯生き抜かれたその記録を見た施主の娘さんをはじめ、お孫さんや親戚の皆さんはとても驚かれていました。
特に印象的だったのが、30代のお孫さんの
「じいちゃんが帰還しなかったら今の私たちはおらんかったんやね」という言葉です。
孫やひ孫の代にまでなると、触れたことも話したこともないおじいちゃんおばあちゃんのことはあまり自分には関係ないと思ってしまうことが多いようです。
しかし、亡き方は時代や世代を超えて、常に私たちにいのちの繋がり、有り難さ、不思議さを教えて下さいます。
改めて皆が揃って法事を営む事の大切さに気づかされました。
お盆、終戦記念日、夏の虫たちの鳴き声をとおして、多くの命にお礼申しながら今を大切に過ごさせていただきましょう。
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